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zoom RSS わさドラ感想第173回 STAND BY ME ドラえもん(2014)

<<   作成日時 : 2014/09/05 00:40   >>

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夏の映画ドラえもん.3D映画でリアルさを出したドラえもん.
そして,「すべての子ども経験者」に向けた,大人をも対象とした映画.

STAND BY ME ドラえもん.
2014年9月4日(木),ドラえもん好きだという後輩2人と3人で劇場で観ました.
8月8日の公開以降,1ヶ月経ってやっと観ることができました.
感想をつづります.




以下,ネタバレにご注意ください!!






ドラえもんの存在を暗黙の了解や前提としない,
出会いや別れといった非永遠性を強烈に訴えた映画です.
すさまじい映画でした.
多くの挑戦・チャレンジを果たした力作だと思います.
それについて,大きな感謝と敬意を表します.
私がとくに強く感じた印象を列挙してみます.

@多くの人々にとっての「既知」である出会いと別れを改めて描く勇気
A数々の名作をギュッと濃縮&接合
 〜しずかちゃんとのロマンスを中心として〜
Bこれまでのアニメではなかった質感とリアルさを実現
C子どもの人生観・大人の人生観…変わるもの,変わらぬもの



@多くの人々にとっての「既知」である出会いと別れを
 改めて描く勇気

監督たちのメッセージにあるように,
ドラえもんがいてくれるのが当たり前と思われがちです.
それにまず果敢に挑みました.
それはドラえもんとの出会いから始まり,別れも描くこと.
今までなぜなかったのでしょうか.
それは,あまりにも有名すぎる原作を通じて,
すでにほとんどの人々が知っているからです.
既知のことをあえて作品として(しかもお金を徴収する映画で)作るのは,
相当並々ならぬ勇気が必要でしょう.
でも,おそらく今回の映画の趣旨は,
ドラえもんの存在に対しての常識・当たり前を崩すこと.
すでに知っていることでも,
原作や単発アニメで断片的に知っているにすぎません.
そのような断片的な知識ではなく,
ドラえもんが「本来の任務遂行」のために派遣され,
限られた時間で友情・絆を育んでいるという大局的な視点.
そのなかで,日常のはかなさと尊さを感じることができるようになっています.


A数々の名作をギュッと濃縮&接合
 〜しずかちゃんとのロマンスを中心として〜

ほとんどの観客が感じたであろう点です.
ドラえもんとの出会いから始まり,別れ・再出発に至るまで,
しずかちゃんとのロマンスを中心に
数々の名作をギュッと濃縮して接合した.そんな構成です.
とくに,「しずかちゃんとのロマンスを中心として」いる点は,
「すりこみタマゴ」「しずかちゃんさようなら」のエピソードを
盛り込んでいることからも明らかでしょう.
もちろん,「雪山のロマンス」「のび太の結婚前夜」は言うに及びません.
恋敵の出木杉との関係にも多くの尺が割かれたのも特徴的です.
これらの名作の濃縮&接合は,単に切り貼りしただけにとどまりません.
一本の話として「通し」で観ることで,
論理的な整合性もある程度確保されているところも多く(わからないところもあった),
単なる足し算ではなく,
かけ算で魅力が増幅している印象を受けました.

とくにグッときたのが,
少年時代の出木杉の完ぺきさ.(そっち?)
「すりこみ」「さようなら」は
私自身の高校時代の「出木杉」的な人物(70号氏)との個人的な経験もあり,
とくに思い入れが強いのですが,バッチリな風格をもっていました.
そしてやっぱり,しずかちゃん.
「雪山のロマンス」では改変がありました.
しずかちゃんの命の危機と,
その救助(青年扮する少年のび太が,
時刻を覚えて青年のび太に助けに来てもらう)です.
ヒロインをここまでするか?というくらいの過酷な雪山の描写.
ドラえもんの「未来は悪い方にも変わることがある」という発言が
何度もフラッシュバックする様子は,きわめて深刻です.
のび太に対してと同時に,観客に対する釘刺しでもあるでしょう.
青年しずかちゃんはびっくりするくらい魅力的.
でも,体調の悪化(度重なる咳から意識を失うところ)がリアルすぎて,
腕時計のアラーム(脈が低下)が非情に響きました.
私にとっての衝撃シーンの一つです.
そんなとき,助けに来た青年のび太はカッコよかったですね.

青年のび太がしていたプロポーズにOKしたのはジーンとくる展開.
でも,青年扮する少年のび太の,何のことだかサッパリというじれったさも,
時間を越えているからこその描写です.
未来の街で青年と少年が大喜びしているシーン.
自分同士で喜びを分かち合っている重要なシーンですね.
それが「ドラえもん抜き」という,のび太自身のやさしさによって
成し遂げられたというのがとても重要.
思い返してみると,ドラえもんって
●ドラえもんがダメなのび太を助けてあげながら友情を築く
●のび太はドラえもんの助けによらない,
 自身のやさしい思いやりの性格によって,子どもから大人に成長する

という,相反する重要なテーマ同時に描かなくてはならないこと.
しかも,今回の映画は
ドラえもんとのび太の友情,のび太の成長を一気に描こうというのですから,
こういう葛藤に直面したことでしょう,たぶん.


ただ,数々の名作をぎゅっと濃縮,結合させたもので,
多くはすんなりと結合部分を受け入れられましたが,
ひとつ疑問に思ったことがあります.
それは,ムシスカンでしずかちゃんに助けられたあと
のび太のしずかちゃんとの結婚可能性(?)が高まって,
……記憶が定かではないが,とにかくしずかちゃんと仲良くなれる可能性が開いた
のび太がこの手でつかんだ云々と屋根の上で感激に浸るシーン
それが未来のしずかちゃんとの仲の良さに接続されていきますが,
そこが「?????」となりました.
たしかに「しずかちゃんさようなら」は
しずかちゃんののび太への甲斐甲斐しさが反映されたおはなしですが,
そこのおはなしでは,のび太は自暴自棄になっているだけです.
要するに,このおはなしでは
のび太が成長する要素がないのでは?と疑問に思います.
しずかちゃんの甲斐甲斐しさは,原作などでは
雪山のロマンスで「そばにいないとみていられないから」という
結婚の理由になっていました.
今回は,その理由はカットされています.
それはのび太の性格を評価する「結婚前夜」とうまく接続するため,
そしてのび太自身の性格の良さと
人間的な成長を描くために必要なのかもしれませんが,
もしそういう理由なら,ムシスカンの事件によって
のび太が獲得できたのは何だったのか,疑問に思います.
ただ単に棚ぼた的にしずかちゃんに思いやってもらった!というのは
うーん,どうかなと思います.
まあ,それをするに値するような人間的な魅力がもともとあったということで
片付けることもできますが.


Bこれまでのアニメではなかった質感とリアルさを実現
次は作画について.
冒頭からはっとさせられました.
ひと言で言うなら,質感です.(それに距離感に,量感…あれ?)
レギュラー版とも,そして毎年春の映画とも根本的に違う,
圧倒的な質感とリアルさです.
(後輩くんから,ジオラマを使って撮影したと教えてくれました)
たとえば空き地.雑草があちこちに生えている様子.
これぞ,「整備されていない空き地」です.
でも子どもにとっては,非常に重要な遊び場・コミュニケーションスペースです.
学校の席もそうですし,のび太の町も.
道路のコンクリートの色のムラや,雨の痕跡,
電柱,電柱に貼られた怪しいチラシまで.
そしてそれぞれに子どもたちだけじゃなくて,
行き交うまちの人々も入念に配置されています.
大人も一緒に住むまちのなかで
必死に生きる子ども社会が描かれています.

のび太の家だってリアルですね.
レギュラーでは広く見えますが,
適度に狭くて「借家」感がでています.
ドタドタとそのなかで走り回るのびドラ.
生活感があふれています.

キャラクターだって同じです.
髪の毛のフサフサさ,衣服の繊維らしさ,そして動き!
さわれそう! 実際にいそう!
そして背の高さからしても,小学生らしい!
ドラえもんの頭テカテカさ,鈴の光具合(ときどき反射してる)も.
リアルな描写が作品のなかに入り込ませてくれます.
もちろん3Dという良さもふんだんに活用されています.
タケコプターで夜のまちを飛び回ったり,
未来のまちを急いで飛んでいくシーンは,
何度でも観たくなります.
いや,観るんじゃないですあれは.実際に自分が飛んでいる感覚です.
電車の音など,効果音も非常にリアルで,
この感覚は劇場でないと難しいでしょう.
くー,たまらない!!
しかも,ニクいことに未来のまちまでリアルなんですよね.
ああ,未来だとこんなふうになってそう!! っていう
デザインの洗練具合.
本当にすごいです.未来までリアルに感じさせるなんて.


C子どもの人生観・大人の人生観…変わるもの,変わらぬもの
「子ども」と「大人」(青年)の両方を描き,
人間・人生・成長について考えさせるのも大きなテーマでしょう.
今振り返れば,子どものとき,あんなに深刻になって悩んでいたことが,
大人になってみれば全然…ということもよくあります.
でも,子どもは子どもなりに,必死に生きています.
そういうことの積み重ねが人生なんだなと強く感じさせる映画です.

そして,そういった必死に向き合う対象は,
大人になるにつれてどんどん高次になるなど変わっていきます.
しかし,そのなかで
少年のび太にも青年のび太にも変わらないものがあります.
人を思いやる気持ちとか,好きな人に対する熱意・情熱とか.
少年と青年が比較されて描かれたことにより,
それぞれにとっての人生の向き合い方を見せつけられました.



以上のような特徴・印象が絡まり合って,
充実した映画になっていたと思います.


最後に,おまけ.

・エンディングでのNG集
のびドラたちがこの映画を撮影しているという
劇中劇の手法をとっています.
これはおお! と思ったと同時に,賛否両論あると思いました.
一人二役になってみます.
賛成側では,ドラ泣きびょーびょーの状態を,
クスクスと笑いながら自然に現実に戻らせてくれることから
この方法を支持します.
2011年「新鉄人」は,私にとっては現実に戻らせない麻薬でした.
一方で,こちらは2013年「ひみ博」のように,
爽快な終わり方をしています.
ドラえもん登場,電気つけるシーンを50回もやり直したのも
微笑ましいし,
ジャイアンが台本を見ているのが映っちゃうNGも微笑ましい.
一方,反対側では,
この映画の「重み」が劇なのか本当の出来事なのかで,
まったく違ってくる
からこの方法を支持しません.
つまり,のびドラたちによる映画撮影という文脈にすると,
この映画自体が軽くなるっていうことです.
まあ,それだけ仲が良いっていうことにもできるんでしょうがねぇ.
最後,撮影終了(クランクアップ)をのび太の部屋で祝うシーン.
正直,私はヘコりました.
ウソ800からのEDの流れだったので,
「ドラえもんおかえり」というお祝いだと思っていたからです.

議論を呼ぶ演出ですが,いずれにしてもかわいい,好きなEDでした.

・原作回帰
わさドラアニメでは,
薬物っぽいから摂取じゃなくて別の方法…というのが
たくさんとられましたが,
この映画はしっかり原作回帰していました.
まあ,だからムシスカンを吐かせるところは,
てっきり飲みつぶれた大学生かよって思いました(笑).
飲みつぶれるといえば,結婚前夜の出木杉も目を見張ります.
あんなカンペキ少年が酒の力であんなにダサく……(ry
いや,でも現実でもよくいますよね.うんうん.リアルだ.

・未来のまち,宣伝だらけ
自動車の企業とか,家電の企業とか.
こういう形でのコマーシャルねぇ……
ぼくはちょっとひっかかるくらいですけど,
ほんとに気になる人もいると思います.
せっかくのタケコプターシーンなのに,って.

・私自身の立場
私自身は,青年寄りでこの映画を観ました.
なので,青年編はかなり見入りました.
後輩も青年なので(そりゃそうだ),
3人ともそれぞれの少年時代を思い出しながら観たことでしょう.
まあ,私は将来的にのび太みたいにはなれませんから.
ある種の幻想をみた気がしますね.(ホンネが出る)



まあ,整合性はカンペキではありませんでしたけれど,
総じて「すばらしい名作」に値するのではないでしょうか?
また観たいです!

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2016年春の映画は,日本誕生のリメイク,新・日本誕生. 若手の実力派監督,八鍬監督による作品です. ...続きを見る
のび太リアニズム
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
中盤、話が無理やりに繋がれているところがありましたね。ただ、疑問を持たせにくい繋ぎになっているところは、さすが山崎監督です。全体的なプロットがしっかりしているのがその理由でしょう。おそらくプロット段階で「のび太しずかを思い別れを決断、その思いが未来を変える。」などとしっかり明記されていたのだと思います。やはり、結果が見えないまま脚本を書いてしまうと、どっちに進むのかわからない…いわゆる「巨人伝現象」が発生してしまいます(笑)。しかし、今回は物語の行く末が山崎監督の中でハッキリ見えていたので、結果「無理があるんじゃ」という繋ぎにはなりましたが、大崩れすることはありませんでしたよね。

今回のドラ誕SPでもそうですが、中盤にアクションシーンを持ってきて、長編物語によくみられる「中盤の盛り上がりの欠け」を防いでいることも感動します。
これもプロットでしっかり見据えてないと、なかなかできませんからね!
こっち
2014/09/07 14:11
こっちさん,コメントありがとうございます.
たしかに,確固たる大まかな流れがあってから,それからストーリーを構成していったというのがよく伝わってきました.「詰め込みすぎ」というのは,大まかな流れがあるからこそですよね.「支離滅裂」ということがなかったのも,流れがしっかりしているからこそでしょう.
のびみつ(管理人)
2014/09/14 23:08
いやー、ドラえもん大ヒットですね。70億ですか。ポケットモンスター1作が正式な数字はわからないので推定はありますが72億越えが確実でほぼジブリを除くアニメ映画界1位になりましたね。(76億こえたとしてもポケモン1作を結局本当に超えたかわからないので)。新大魔境は330万人で3Dドラえもんは500万人越えなので170万人はほぼ大人が来たことになります。全く予想してません。未公開試写会ではトヨタの社長が直々にコメントだしただけあって、17年後はトヨタだらけでしたね。日産やマツダはトヨタにつぶされたんですかね。話題は変わりますが東京ゲームショーではついにゴーグルをかけたら360度ゲームの世界というゲーム機はついに出ましたね。やく20年前のパラレル西遊記のヒーローマシンが22世紀待たずに本当に完成しそうです。おそらく手袋靴下が出てきて足の感覚や手の感覚がリアルになる附属品も出ると思いますが、あれでバイオハザードとかやって人を切る感覚がリアルに出て何十時間やったら本当に精神病が出そうで怖いです。のび太のママが言っていた現実世界と仮想世界がわからなくなる時代が本当に来そうです。
ハナ
2014/09/19 16:21
ハナさん,コメントありがとうございます.
驚きました.驚異的な数字を出していますね.ごく一般人にも浸透している作品だと思います(私の身の回りにも).広告料によって作品内に企業名を出す手法は,やり過ぎると興ざめの恐れもありそうな気がします.
のびみつ(管理人)
2014/09/20 00:36

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